「パラサイト 半地下の家族」感想(ネタバレ)

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【歴史的快挙・アカデミー賞受賞】「パラサイト 半地下の家族」感想(ネタバレ)衝撃のクライマックス

トップ画像引用:www.parasite-mv.jp

「パラサイト 半地下の家族」を公開初日にみてきました。

前評判通りのおもしろさでした。

ユーモアあふれる描写と切迫したシーンの連続。

まったく飽きさせることのない展開。

こういったエンターテイメントの楽しさと同時に、社会性のあるテーマがこの映画の特徴です。

地上の金持ちの家族と地下で寄生する貧困の家族という対立構図の中で映画は進んでいきます。

最後のエンドロールが流れるころには、うまく言葉でにはできないけれど、何かズッシリとしたものが残る。

人間の持つ本質、社会が持つ構造的な問題を観客に投げかけてくる映画だと思います。

それをユーモアを用いながら極上のエンターテイメントに仕上げてくるのがポンジョノ映画の見どころ

個人的には「母なる証明」と並ぶポンジョノ監督の最高傑作です。

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目次

「パラサイト 半地下の家族」とは

「パラサイト半地下の家族」は韓国のブラック・コメディ映画です。

カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルム・ドールを受賞

日本では2020年1月10日から一般公開となっています。

「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「スノーピアサー」の監督ポン・ジュノと主演ソン・ガンホが4度目のタッグを組み、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品。
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。
そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。
そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。
正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。

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地上、半地下、地下で暮らす家族

この映画のテーマの1つが富裕層と貧困層の対立です。

ポンジョノ監督はインタビューで「寄生」というテーマについて次のように述べています。

「違った環境や状況に身を置く人々が、同じ空間に一緒に住むことは容易ではありません。
この悲しい世界では、共存や共生に基づく人間関係が成り立たず、あるグループが他のグループと寄生的な関係に追いやられることが増えています。

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その家族の属する階級が、地上、半地下、地下という住む場所で表現されています。

主人公の家族は半地下で暮らし、身元を偽り、富裕層の家族の元で働くことにより収入を得ます。

映画の中盤では家政婦の夫が富裕層の家の地下に潜み、寄生しながら生きていることがわかります。

上流階級に属し、子供と幸せに暮らす地上の家族。

家族全員が失業中、半地下に住む家族。
金持ちの家の地下に潜み、寄生する家族。

画像引用:www.parasite-mv.jp

ポン・ジュノ監督は格差の要因を個人の能力とか性格とかに求まるのではなく、

社会の構造として描いているように思います。

実際、金持ちの家族はみんな性格のいい人ばかり、子供にやさしく仕事をバリバリこなす父親、素直な子供たち、とくに奥さんは正直で優しく、主人公の半地下家族の計画に見事に騙され、その家族のメンバーを雇い入れることになります。

一方、半地下家族は全員失業中で、大学にも落ちているが頭はいい。

ただ、そういった個人の性格や能力でどうしようもない社会的な構造で、格差が生まれ、貧困層が富裕層に寄生する状況が生まれてくる。

ポン・ジュノ監督のコメントです。

そのような世界の真っ只中で、生存をかけた争いから抜け出せずに奮闘する家族を誰が非難したり、“寄生虫”と呼ぶことができるでしょう?
彼らは初めから“寄生虫”であったわけではありません。
彼らは私たちの隣人で、友人で、そして同僚だったのにも関わらず、絶望の淵に押しやられてしまっただけです」

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この映画の見どころのシーンは、ソン・ガンホが父親役をつとめる家族の会話のシーンだと思います。

金持ちの家への就職に成功し、金持ち家族が出かけたときにリビングで半地下家族が酒を飲む。

そこで、この段になってソンガンホは自分たちが追い出した運転手を心配する。

一方で、子供たちは自分たちのことだけ考えて入れば良いという。

貧困の中で、そういった構造の中では、他人を思いやる気持ちを持つことは難しいかもいれません。

ただ、就職してゆっくりした食事をもているようになると他人への関心を持つことができる。

しかし、貧困の中では自分のこと、自分の家族のことで精一杯なのです。

実際に、半地下の家族と金持ちの家に寄生していた夫婦は協力しあうこではなく殺しあうことになり、

それが、金持ち家族を含めた悲劇へとつながっていく。

ポンジョノ監督のコメントです。

「今日の資本主義社会には、目に見えない階級やカーストがあります。
私たちはそれを隠し、過去の遺物として表面的には馬鹿にしていますが、現実には越えられない階級の一線が存在します。
本作は、ますます二極化の進む今日の社会の中で、2つの階級がぶつかり合う時に生じる、避けられない亀裂を描いているのです」

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映画の中では、貧困層が我先にと争うシーンが描かれ、半地下の家族と地下に寄生する夫婦は実際に殺しあいます。
それが、地上の金持ち家族への暴力にもつながっていきます。

人は社会的な構造の中で、ある状況に置かれることによって個人の性格や能力も固定されていっているのではと感じました。


金持ち家族の豪邸へ向かう半地下家族の息子。

豪邸に向かうその道は上り坂りになっていて、その上り坂は貧困外から高級住宅街へ格差が象徴になっているように思います。

匂い

本作では人の発する 「匂い」が富裕層と貧困層の家族の間の距離を象徴しています。

そして、半地下家族の発する「匂い」がクライマックスでの悲劇への伏線となっています。

ポンジョノ監督は人の持つ「匂い」について次のようにコメントしています。

「現実世界の中で、裕福な人々と貧しい人たちが、互いに“臭い”を嗅ぎ合うという場面はあまりないはず。
なぜなら、互いがある程度の“ライン”を守り、それを越えないようにしているからです。
飛行機の搭乗時には、かたやファーストクラス、一方はエコノミー。それぞれが訪れるレストランやホテルも異なりますよね。つまり動線が違うんですよ。
だから“臭い”を嗅ぎ合う瞬間がない」

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金持ちの家に身分を隠してもぐりこんだ半地下家族だが、自分たちが独特の匂いを発しているのは気づいていません。

画像引用:sp.kdaisuki.jp

確かに誰でも自分の匂いは気づきずらいもの。

しかし、子供は半地下家族のメンバーがみな同じ匂いを発していることに気づきます。

半地下家族の父親・キテクが運転手を務める車の中では、その匂いを嗅ぎあうことになります。

この映画のハイライトのシーン半地下家族の父親・キテクが金持ちの父親を切り殺すところだと思いますが、その原因は、金持ちの父親の半地下家族の父親・キテクに対する匂いのセリフに現れていると思います。

金持ちの父親が半地下家族の父親・キテクの匂いについて言及し、それをキテクが気にする場面が何度か描かれています。

以前は、愛想よくしていた半地下家族の父親・キテクでしたが、悲劇が起きる直前のシーンでは思いつめた顔をしています。

この顔が、金持ち家族への怒りを示しているように思えます。

「匂い」についてのが金持ちの父親のコメント、それに対する半地下家族の父親・キテクの心理が悲劇につながっていく心理を映画の中で象徴しているように思えました。

ポンジョノ監督のコメントです。

「この映画では、互いの“臭い”を近距離で嗅ぐことができる状態になっています。
パク社長のセリフに“度を越す”というものがあります。彼には『ここから先は入ってくれるな』という“ライン”がある。
パク社長にとって、貧しい世界は『見たくないもの』『自分には関係のないもの』なんです。
本作では(“ライン”を越えて)“臭い”が入ってきたことによって、悲劇がもたらされるんです」

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鮮烈なオープニングシーンと静かなエンディング

「母なる証明」のオープニングは、木漏れ日の草原でゆらゆらと1人踊っている老婆。
「殺人の追憶」のオープニングは、田舎の畑で虫を捕まえる子どものドアップ。

「いったいここから何がはじまるんだ」と期待せずにはいられない。

ポンジョノ監督の映画はそんな鮮烈なオープニングシーンで始まります。。

「パラサイト 半地下の家族」のオープニングは、映画を象徴する半地下の窓から見える地上のシーンから始まります。

このシーンだけで、家族の状況が理解できる描写がすごい。

画像引用:YouTube

このオープニングシーンだけ何度も見たくなります。

半地下の家の中でも高い位置にある便器に上り、ほかの家のWifiを探すシーンも。

画像引用:www.parasite-mv.jp

ピザの箱を折る内職をしたり、なぜかピザ屋の社長が若かったり、コオロギを駆除するために窓を閉めず、害虫駆除の煙を家に入れたりユーモアたっぷりに話は展開していきます。

観客席からも笑い声が響いていました。

エンディングでは再び最初と同じ半地下の家の窓が使われます。

エンディングでは、息子が金持ちになり、父親が潜む豪邸を買い取るところで、終わるかと思いきや。

それは、こうだったらよいなというただの妄想。

結局カメラは半地下でクラス息子のショットでエンディングとなります。

このシーンは、貧困の構造は簡単には変わらない、固定されてたものということを言っているように思えました。

このエンディングが終わるころには、言葉にできない何かズシンとした沈殿物が頭に残る。

パラサイトはそんな映画です。

スマホの使い方が印象的

撮影でうまいなと思ったのが、 スマホの使ったカメラワーク

スマホでなにかを録画し、その動画、静止画をカメラで見せているというシーンが多くあります。

半地下の家の窓から、外の風景をとる。

半地下家族と、地下で寄生している夫婦の争うシーンをスマホで撮る。

現在の映画ならではの撮影方法であると同時に、貧困層でもスマホを持っているという格差を描いた本作品にとてもあっている撮影方法であると思いました。

【ネタバレ】展開で驚いたところ

話が展開は早い映画だったと思います。

展開で驚いたところは以下です。

  1. 家政婦の夫が豪邸の地下に潜んでいた
  2. 地下に潜んでいた家政婦の夫が暴れだす
  3. 半地下家族の父親が犯罪後、地下で過ごしていた
  4. 金持ち娘が半地下息子を好きになる。半地下息子が殴られた後も助けようといていた
  5. 半地下息子は、事件の後も生きていたが殴られて頭がおかしくなる

まだまだ伏線がわからないところがあるので、もう一度映画をみたいと思っています。

さいごに

母なる証明では、母の息子に対する愛が狂気となる様が描かれましたが、本作はよりドライに、社会が持つ構造としての格差を描いているような印象を受けました。

ストーリー、キャストの演技、伏線の回収、カメラワークどれをとっても完成度の高い映画で、カンヌでのパルムドールも納得です。

その迫力をぜひ、映画館で体験することをオススメします。


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